ヒモだった頃の僕
少し前まで僕はヒモとして、3つ年下の彼女の家で住んでいた事がある。
生活費は全て彼女が出してくれていたので僕は殆ど働きもせずに過ごす事が出来たのだが、やはり自分の自由になるお金が無いと好きな時に遊びに行くのも難しい。
その点は不満であった。
彼女にはよくお小遣いをせがんでは迷惑をかけていたものだ。
どうしても欲しいゲームソフトがあった時に、つい彼女のカードで勝手に購入してしまった時はとても怒られた。
そんな彼女とはナンパがキッカケで知り合う。
渋谷のクラブで踊っている所を見かけて私が声をかけると意外にすんなりと上手くいった。丁度付き合っている相手もお互いいないという事で、それから2人の交際が始まったのである。
舞い込だ幸運!!お金持ちお嬢様との出会いと交際
初めて相手の家に遊びに行った時は本当にびっくりしたのを今でもハッキリと憶えている。
入り口を入った所にある受付にはコンシェルジェがいて、中には来客用のスペースやジムが入っているような都内の高級タワーマンションに一人暮らしをしていたので、てっきりお水系の女かと思ったのだが、実は両親が2人とも医者でクリニックを開業しており、自身も医大生で将来は医者を目指しているというお金持ちお嬢様だったのだ。
幼い頃から女子校に通っていたのであまり男と付き合う経験が無かったという、まるでマンガのストーリーにありそうなシチュエーションである。
僕が今までナンパでゲットしてきた女の中では、かなりの金持ちであった。
※ちなみに付き合った中で一番金持ちだったのは別れた奥さんである。
だが、ナンパは基本的にヤルのが目的であるから、別に相手の経済状況なんか普段はどうでも良く、全くもって気にも留める事は無い。
だがその頃僕はプータローで仕事もお金も住む家も無く、毎日マンガ喫茶で寝泊りするようなギリギリの病んだ生活を送っていて、もうにっちもさっちもいかないような状況だったから、これはチャンス到来とばかりに彼女の家に転がり込むようにして2人の同棲、もといヒモ生活が始まった。
そういえば、知り合いに定職にもロクに就かず、下手くそな音楽なんかばかりやっているような奴がいるが、たまたま同じバンドのメンバーで交際していた金持ちの女と最近ついに結婚したらしく、何と彼女の親から都内に新築の家を建ててもらったという話を聞いていたのだが、そういう濡れ手に粟的な幸運が自分にも舞い込んできたような気がして少々浮かれていたのも無理はない。
忍び寄る不幸。別れさせ屋の恐怖!!
そんなこんなで、しばらくはお互い楽しく甘い時を過ごしていたのであるが、ある時から急に私の携帯に知らない男から電話が来るようになった。
電話の内容は彼女と今直ぐに別れろ、さもないと…、という脅迫めいたものだ。
さては彼女が浮気でもして、相手の男が僕を気に入らないというような話か?それとも、昔付き合っていた男が彼女と今更未練がましくヨリを戻そうとでもしているのか?
だが昔から異性と遊びまくっているような私と違い、彼女に限ってそういう事は考えにくい。
脅しは徐々にエスカレートしていき、段々と電話に出るのが恐ろしくなってきたのでとうとうこの事を相手に打ち明けると、なんと僕を好意的に思わない彼女の両親が娘を心配して2人を別れさせようと、地元の893に頼んだというのだ。
流石にこれはどうしょうもないと思って僕は逃げるようにして彼女の元から去ったのだが、それでもしばらくはその事がトラウマになり、電話の着信音がなる度にビクッと身体がのけ反るようになってしまったのだった。
お金持ちの女と付き合ったのは今回だけではなく、他にも経験があるが、それについてはまた別の機会に紹介するとして、とにかくヒモというのはいつもラクでイイ事ばかりではないというのはよく分かったつもりだ。
憧れのお金持ち令嬢との交際も、あまりに2人の住む世界が違いすぎるとそのギャップに面食らう事になるのは必定なのだから。